幅広い世代のお客様に居心地が良く、数あるサロンの中から選ばれる理由のあるお店に。
美容師になってから、独立するまでの経緯を教えてください。
18歳で最初のお店に入り、見習いとして働いてから1年9か月でスタイリストとしてデビューしました。当時の見習いは今のアシスタントとは違って雑用係に近く、技術者でなければお店の一員として扱ってもらえませんでした。シャンプー指名のお客様がデビューを楽しみにしてくれたこともあり、早くスタイリストになりたくて人の3倍は努力しました。
メイクを始めたのもこの頃からでしたが、当時のお店はメイクで稼げるわけがないという考えで、練習中に電気を消されたこともありました。それでもメイクをしたいと店長に伝えたら、あなたはミナミに行った方がいいと言われたんです。
それで心斎橋に出たのが24歳のころでした。熱心に勉強して、メイクのメニューを作らせてもらいました。マネージャーも務め、しばらくはバブルの華やかな時代でした。
でもバブルが弾けて急にお店が無くなることになったのです。ご予約は先まで入っている。なんとしてもお客様の期待に応えたかったので、先輩が経営するお店に間借りさせてもらってお客様を迎え、新しく場所を探して独立することにしました。
12坪ほどの広さに椅子は4つ、シャンプー台は2つ。これがshowerのはじまりでした。
お店に対するこだわりを教えてください。
showerは、幅広い世代のお客様に居心地の良い場所であることを考えたお店です。緑に囲まれた明るいヘアサロンと、個別にリラックスして過ごせるブライダル&エステはフロアを分けています。「シャワー」という店名も、子どもから年配の方まで簡単に言える名前にしたくてつけました。
スタイリストとカラーリストの分業制を取り入れているのもこだわりのひとつ。ニューヨークによく行っていた頃、そこで見たトップを走り続けているお店はすべて分業制でした。
日本でカラーリストを配置しているサロンはまだ多くはないですが、私は専門分野を持って高い技術を身につけることがお客様の満足につながると考えています。
カット、ヘアメイク、モデル撮影、ブライダル、エステ…showerの仕事は、これまでの仕事の集大成。
showerは幅広い活動をされていると思いますが、どのような経緯で仕事が広がってきたのでしょうか。
ヘアメイクの仕事は心斎橋のサロンに移ったことで、そこのお客様だった芸能関係者やモデルさんたちからコンサートや舞台、雑誌・CMの撮影などのご紹介をいただいたことがはじまりです。
あるとき、女優さんの着付けとセットとメイクを担当することになりました。専属のヘアメイクさんが着付けはできないとのことで、知人の紹介で抜擢されたのです。そのときの仕事を気に入ってもらい、そこから8年間も担当させていただきました。
ブライダルメニューも最初は一人のお客様からのご依頼がきっかけでした。
当時は結婚式場のスタイリストが新婦様のヘアメイクをすることが通例でしたが、お客様から「ずっと任せていた美容師さんに、一生で一番大切な日を任せられないシステムってどうなの」と言われ、「なるほど、たしかにそうだ」と思いました。
最初の結婚式の仕事は右も左もわからない中でなんとか役目を全うし、お客様から「あなたがいてくれたおかげで最高のハレの日になった」とお喜びいただきました。こんなにやりがいのある仕事があるのかと気が付き、当時努めていたお店でブライダルメニューを確立。それが今のshowerにも受け継がれているわけです。
振り返れば、showerで提供しているメニューは、これまでの仕事の集大成ですね。
美容師は人とのご縁を紡ぐことができる素晴らしい仕事。
お仕事で大切にしていることは何ですか?
お客様とご縁を紡ぎ、人生に寄り添うことを大切にしています。
美容師はお客様と一緒に成長し、人生を共に歩む仕事です。誕生からの初カット、七五三、入学式、卒業式、成人式、結婚式……人生のハレの日には、いつも美容師が関わっています。そして美容室は1年で何度も通われます。遠くに住むお友達やご家族よりも美容師と会う頻度が高い方もいらっしゃるかもしれません。
これぐらい身近なのでお客様とはいろんなお話をします。髪のことだけでなく、「結婚記念日のプレゼントは何がいい?」とか「奥さんと行くレストランはどうしよう?」とか。相談にのると、その後のエピソードを教えてくださるので、またつながりが深まっていきます。
思えば新しい仕事が始まるのも、お客様とのつながりからでした。コンテストの写真を見てくれたお客様が舞台の現場に呼んでくれたり、その現場で出会った方がリサイタルをするからとヘアメイクを依頼してくれたり。時には厳しい言葉をいただくこともありましたが、その度に努力して技術を磨くことで期待に応えました。
私にとって一番大切なのは、人とのご縁を紡ぐこと。美容師はお客様のすぐ近くにいられる素晴らしい仕事だと思います。
今後お店をどのようにしていきたいですか?
仕事はチームワークだと思っているので、それぞれのスタッフが個々ではなく、ひとつのチームとして力を発揮できるお店にしていきたいです。
showerはお客様に育てていただいたサロン。これからもお客様と共に成長していきます。